めんどくさい事をしよう。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

挨拶もそこそこに、本日は久しぶりに書きたい事を
垂れ流します。

生物多様性」という言葉をご存知でしょうか?
僕の働く環境関係の仕事では、温暖化と並ぶ実にホットな話題であります。
生きとし生けるものが、互いにその多様性の中で依存しあい、バランスをとってこの地球上に暮らしていて、その種がある分だけ、豊かな自然環境が保たれている。
そのため、「種」を維持し、関係性を維持する事が地球環境全体を保全していくために必要だという事です。(ざっくりと私見であります。詳しく知りたい人は調べてみて下さい)
生物多様性も皆さんご存知の地球温暖化問題ももちろん地球環境の問題ですから、どっちがどうという話ではありません。互いに密接に関係しあう問題であり、温暖化問題の解決なしには、多様性保全も語れないというのが僕の認識であります、非常にめんどくさい話です。

さて、話は変わりますが、僕の勤務するのは、新宿三丁目が最寄りであり、もっぱら新宿が
一番身近な街であります。
その新宿のJR新宿駅東口の地下1階に「ベルグ」というビアバーがあります。
コーヒーとかビールとか酒とかホットドッグとかあって、んでもって旨くて。ゴミゴミしてて大体座れないんだけど、なんだか落ち着くそんな店です。
僕はその店の常連ではありません。今までにも数える程しか言った事ないし、
ここ最近は、飲んで帰る事も少なくなったし、もともと行くって言ったってかみさんがまだ「彼女」だったときに、会社帰りとかに行ってた店ですから最近はホントにご無沙汰していました。
で、その店がどうしたかというと、いまその駅ビル(元々マイシティ)がルミネエストというファッションビルに変わったのをきっかけに立ち退きを迫られているという事です。

もともとマイシティ自体が破綻してしまったためにルミネが救済するという形で駅ビル自体が存続したという事なのですが、このルミネも正直南口にもあるし、店はかぶっているし、本屋はなくなるしであまりいい印象がありませんでした。

立ち退きの理由は「ルミネは女性向けのファッションビルだから飲食店はいらない」
との事だそうです。(ベルグのウェブサイトから)

この理由を聞いた時、非常に悲しいなあと思いました。
ここで先ほどの「多様性」につながるのですが、統一的なイメージに全体を創りあげていく事は、美しいかもしれないし、分かりやすいし、管理しやすい事だと思います。
しかしながら、いろいろなお店がある事、イメージの統一がしにくい事、「雑多」で「猥雑」な事は、面倒だけど非常に魅力的でもあるのだと思います。
ルミネが女性向けファッションビルを目指しているのは悪い事ではないと思います。
現に東口地下も以前より活気があるかのようにも見えます(実際は、BGMのキック音が必要以上に大きくて、それによって騒々しいためにぎわっているかのように見えているだけかもしれませんが)
ただ、かといって新宿東口を利用する人々に愛されている店(しかも繁盛している)を追い出すというのはどんなもんだろと思います。

おもいで横町でもなく、歌舞伎町でもなく、末広通りでもなく、新宿東口のあの場所だからこそ、ベルグベルグなのだと思います。
正直、今日行った時に奥に「三愛水着楽園」があったのには度肝を抜かれました。
そば屋とベルグに挟まれて誰が水着を買うのだろうかと。まあそれも多様性なのかな?

店というのは「文化」です。そういう意味ではこの立ち退きは文化の多様性も否定している事につながりかねません。パッケージとイメージで売って、売れなければ別のブランド呼んでというやり方で、いったい何が残るのでしょうか。

私たちは、だんだんと「めんどくさい事」をやめてしまっています。
もともとお年賀で年初のご挨拶に伺っていたものを年賀状にし、それが今ではメールで済ましてしまう。
時代の流れかもしれないけれど、人のつながりはどんどんと薄っぺらになり、関係性は薄味で味気なくなっていく。
私たちは、様々な情報に翻弄され、己の価値観があるんだかないんだか分け分からなくなって
「とりあえず、これ押さえとけばOK」というような思考を停止するような選択を常に迫られているような気がする。

物事は簡単でなく、非常にめんどくさい。そのめんどくささを乗り越えて「価値」を感じることが出来るのではないか。人だって自然だってお店だって多様である事はそれだけで価値がある事ではないだろうか。もちろんある程度統一を取る必要がある部分を認めながら、互いの良い所を見ていく事、干渉しあう事、それはとてもめんどくさいけど、其処にしかない空気を生だすことが出来ると思う。

大きい組織は、小回りが利かなくなってジレンマに陥る事もあるだろう。担当者の一存で決定できる事がどんどん減り、考え方の固まった上層部の判断がトップダウンでくるならば、今回の一件に関しても、フレキシブルに対応はできないのかもしれない。組織の理論と個人店の理論ではおそらく話は平行線のままだ。
けれどどこかに必ず落としどころはあるはずだ。お互いが歩み寄り何とか手をつなごうと努力する事で見えてくるものがある。非常に面倒な事ではあるが、その先に見えるのは新しい「文化」が産まれる瞬間であるかもしれないのだ。

僕は、ベルグがあの場所にあってほしい。たまに東口から帰るとき、ベルグがある事それだけでなんだか「ホッ」とするのだ。(階下のスタンドジュース屋も同様に)
そしてそんな場所を許容する事のできる街であってほしい。

少なくとも新宿は、若者だけの街ではない(断じて)ならばJRの駅前をほぼ全て女性向けファッションビルにするのはいかがなものかと正直思ってしまう。

微妙に垢抜けられない、おっさんの哀愁が漂う新宿が好きです。

どなたか、今度一緒にベルグ行きましょ。
店内は今時珍しくタバコもOKです。

あ、そうだ今年の目標は「めんどくさい事をする」とします。
無論、「無駄」とは違う「めんどくささ」を指しておりますのであしからず。