立ち食いそば

そばというのは、江戸のものだと考える。
基本的には、そばというもんは、さっと入ってズズッとやって
さっと帰るのが粋な感じだと思う。

そういった意味では、今日の立ち食いそばというのは
もともとの江戸の情緒を十分に味わえる大切な文化なのではないかと
考える次第である。

最近の立ち食いそば(スタンドそばも含む)は、あなどれない。
大抵は500円以下で、それなりのものを食わせてくれる。
茹でたてを提供してくれるところ、店頭で天ぷらを揚げてくれるところなど、
さまざまだ。

中でも私が一番気に入っているのは
前にも紹介した新宿のおもいで横町にある「かめや」である。
ここでは、日に3回だしをとり、麺は茹でたてである事が多く
また、天ぷらも揚げたてを食べる機会が多い。
そして何より、ここの卵(温泉卵)の茹で具合が最高。
君がとろりとして解ける絶妙の茹で加減である。

本日は、高校の友人しおんと飲んだ帰りに立ち寄る。
彼は天玉そばを私はもりそばを。
私もいろいろなところでスタンドそばを食べてきたが
ここの素晴らしいのは、麺とダシのバランスの良さ。
茹で加減、そばの割、ダシの味がとてもバランスが良い。
新宿でも南口にある信州屋というところも
うまいが、ここはダシが物足りない。
そういった意味では、ここは断トツである。

以前、妻の実家に帰った時
親戚の方に「東京はそばはダシをちょっとしか付けないんやろ」
と言われ「そうです」と答えたところ。
「それはダシが不味いからや」といわれ、苦笑いをした。
しかし、そうではない。
「江戸の粋」と関西の文化を一緒にしてしまっては困る。
ダシをちょっと付けて、そばの風味を味わう。
寿司にだって醤油をいっぱいつけたりしない。

だいたいそばとか寿司とかってものはせっかちな江戸っ子が
さっと、食べられるいわばファ−ストフードとして存在したものである。
関西にはもちろん美味しいものもたくさんあるが、
自分とこが何より一番と思いすぎるところは少々鼻につく。

話はそれたが、立ち食いそばやスタンドそば
スローフードとか食の安全とかいわれる中で
そばというのは、できるまで(製造過程→製麺、ダシをとる等)は
時間がかかるしスローと言って差し支えないが
消費者に提供する際には非常にファストなものとして
非常にこれからの社会を考えて行く上で様々な側面を持ったものだと思う。

そのような側面を持つものを見つけて行く事で
これからの社会を創造して行くきっかけになるのではないかと考える次第である。